語り得ぬものを語る

主に腕時計と鉄道について語るブログです。自分の所有する物や、商品レビューなども書きます。

組み立てた機械式時計のインプレ 儀象堂

先日組み立てた機械式時計を2週間ほど使用してみたので、その印象について記す。

●文字盤
なんと言っても文字盤の青色の発色が美しい。放射目の濃いブルーは夜空をイメージしているらしく、見る角度や光の当て方によりさまざまな表情を見せてくれる。この時計のデザインの最大の売りである。
あと、自動巻であることを示すautomaticなどの表記がないのが良い。機械式時計であることは一目瞭然だし、わざわざ文字による説明は不要だと思う。


●インデックス
ピラミッドカットの略字が特徴的だが、これは地元下諏訪の「星が塔遺跡」で取れる黒曜石をモチーフにしている。この形状によりキラキラと輝く夜空の星のように見える。
さらに5時位置には五芒星とanniversaryの表記があり、25周年記念であることを演出している。
なお、この時計はオリエント(現在セイコーエプソン)のムーブメントを使用しているのだが、オープンハートの位置が9時位置なのが普通なのに対し、この時計では8時位置に窓が開いていてテンプとアンクルの動きを確認できる。ここは時計の組み立てで最も神経を使ったところだったので、見えるのが嬉しい。


●針
不満を述べるとすれば針の形状・長さであろう。ドーフィン針の形状はグランドセイコーなどでもお馴染みの形で夜光が塗ってあり実用性は高いものの、立体感が乏しくギラついた鋭さがない。
また、ケースが39ミリのためか、インデックスと時針の隙間が大きく感じられる。要するに寸足らずな感じで、あと1,2ミリあればだいぶ印象が変わるのになと思う。
秒針はか細すぎて印象が薄い。昔の時計のように針先を曲げて欲しいとは思わないが、もう少し重量感のある針にしてくれるとよかったのになと思う。ただ、このムーブメントだとトルクが小さくて、重い針を回すのが大変なのかもしれない。


●ケース径
前述のように39ミリなので、現代的なサイズと言える。私は手首が細いのでもう少し小さい方が腕に乗せた時に安定するのだが、このデザインの時計であれば39ミリで良いと思う。

●ブレスレット
こちらはオリエントのブレスレットなのだが、シャラシャラした感じで安っぽい。価格相応といったところなのだろうが、当然ロレックスやグランドセイコーのしっとりした感じとは違う。気に入らなければ皮ベルトに交換できるわけだし、いずれ気分転換に皮ベルトを新調しても良いかもしれない。

●総評
色々不満も書いてみたが、総合的な満足度は高い。それなりの価格の時計を持っているから、手作りしたものであっても大事に使わないのではないかという懸念があったが、杞憂に終わりそうだ。むしろ思った以上の出来栄えであって、この機会に組み立てておいて本当に良かったと思う。

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機械式時計を組み立てる @下諏訪 儀象堂

久しぶりのブログ更新。

昨日機械式時計の組み立てに参加した。 場所は長野県の下諏訪にある儀象堂という時計工房。

参加したのは25歳の男性と私の二人。その方は鹿児島県の屋久島からの参加ということで驚いたが、並々ならぬ意気込みを感じた。担当技師はセイコーエプソンOBの平林さんという超ベテランの講師だ。

白衣を着て、講師の説明を聞く。初めにオリエンテーションがあって、全体の組み立て工程の話があり、作業を開始する。 地板にきち車、二番車、巻真を取り付けたあたりまでは割とスムーズに進んだ。


ひょっとしたら楽勝?と思いきや、ここからが大変だった。。

次は、かんぬきや香箱車など、動力伝達機構の部品を組み立てる段階。この辺りになると、老眼の進んだ私には、ごく小さな穴に部品を通すのが結構難しくなり、ハズキルーペのようなものを使用してチャレンジし、なんとかクリアする。

さらに脱進機や調速機構の取り付けに移る。アンクルの取り付けに苦戦した後、時計の心臓部とも言えるテンプの取り付けをする。
これがまた繊細な部品で、ピンセットで裏返しながら機械にそっと差し込むと、付いた途端にテンプが動き始め、感動を覚えた。


午前中に機械部分の取り付けはほぼ終わり、午後は外装に取り掛かる。
中でも自分が一番苦労したのは、筒車を取り付けた後の針の取り付け(特に秒針)。
私が作っているのは限定品の時計なので、文字盤に傷がつくと交換できないから絶対に傷をつけないようにしてくれ、と言われて緊張する。
そう言われても、普段ピンセットを使って細かい作業をすることなどないし、力の加減が難しく何度も手をプルプルさせて、針をポロリと落としてしまい悪戦苦闘。 私にとってはここが一番大変だった。

それでも講師の方に助けてもらいながら、なんとか取り付けることが出来た。
ひっくり返して回転錐をつけてケースに嵌め込む。
途中で精度のチェックなども行いながら、5時間近くでようやく完成した。

時計を腕にはめて8時の小窓から見えるテンプの動きを眺めていると、愛着とやり遂げたささやかな自信が湧いてきた。
また、機械式時計の仕組みについても、今まで以上に興味が湧いてきた。本で読んである程度構造は知っていたものの、実際に組み立てるとなると話は別だ。これは経験しないと絶対にわからない。

そういう意味で貴重な経験が出来たなと思う。
場所が遠いし車がないと前泊が必要なので、お金もそれなりにかかるけれど。時計の好きな方には楽しめる作業と思うので、もしご興味のある方は参加されると良いと思う。

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【Book】豊饒の海(三島由紀夫)

三島由紀夫豊饒の海を読了した。全4巻の大作で、三島由紀夫の最大かつ最後の作品。難しい部分も多いが、三島の華麗な文体と豊かな語彙に加え、生と死、美と醜の絶妙なコントラストが味わえる作品。特に最後の大どんでん返しの驚きは、最後まで読むことでしか味わえない感覚だ。

読みやすさ☆☆★★★
おもしろさ☆☆☆☆★

●あらすじ
輪廻転生をテーマにした作品で、各巻で登場人物が生まれ変わる。生まれ変わる人には、脇腹に3つのホクロがあり、それが目印になっているという変わった特徴がある。

「春の雪」は華族に生まれた松枝清顕と綾倉聡子の報われぬ恋愛を描いた物語。綾子が子供を堕し出家するという悲劇的な終わり方をする。

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感想(1件)


奔馬」は飯沼勲という血気盛んな若者が叛乱を起こす話。思想的に偏った決起集団で、読んでいて感情移入がしにくかった。結局、最後は切腹自殺をするところが、三島作品らしい。

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暁の寺」では、タイの姫君であるジン・ジャンが生まれ変わりの人物。輪廻転生の実相に一番迫っているのはこの巻なのだが、阿頼耶識など普通に馴染みのない言葉が多く思想的に難解。

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感想(13件)


最終巻の「天人五衰」は打って変わって読みやすいのだが、この巻だけ異質だ。安永透という人物が生まれ変わりと思いきや、実は偽者であるとわかり、最終的に1巻目の「春の雪」に出ていた綾倉聡子が尼僧として現れ、衝撃の結末を迎える。

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●最後に
実際、これだけの大作なので、読むのは一苦労なのだが、読了後の感動は凄まじいものがある。三島自身が、これ以上の小説を書くことは出来ない、と言い残して、市ヶ谷駐屯地での割腹自殺を遂げたわけだから、事実上の遺書といってもよい。

三島は本当に謎多き作家だが、最後のどんでん返しで、彼の抱えていた死生観・無常感のようなものを推察できるし、作品名の「豊饒の海」というのは痛烈な皮肉で、実は「月の海」のように枯れ果てた窪みを意図しているというのが理解できる。

新型コロナウィルスに感染したこと

3月の初めに家族全員が新型コロナウィルスに感染した。
感染経路ははっきりしないが、おそらく長男が小学校でもらってきた可能性が高い。他のクラスメイトも感染してたし、先生も休み学級閉鎖になったから。
そこからは、家族にうつらないように自分たちなりに考えて隔離生活をしたのだが、感染力の強いウィルスなので、狭いマンションでいくら頑張っても無理がある。妻、私、次男の順に感染してしまった。

そこからは、毎日健康状態をチェックして保健所に連絡する日々となった。濃厚接触者扱いなので外出できず、食料の買い出しに行くことができない。地元の市役所に救援物資の依頼をしてみたが、他にもっとひどい症状の家庭があるとかで、先送りの状態になってしまった。

そんななか、親や義父母など周りの人にはずいぶん助けていただき、有難さを感じた。自分も逆の立場になったら、困っている人の力になりたいと思う。

幸いにも私はほとんど無症状で、軽い風邪のような状態で済んだのだが、息子は39度を超える高熱、妻は喉の痛みと味覚障害、次男は激しい頭痛で苦しんだ。なぜ同じ病気に罹って症状が人によってこれほど違うのか不思議である。やはり、これは今までに罹ったことのない病気なのだなと改めて思い、不気味なものを感じた。

自分は家族の看病をしながら在宅勤務を続けていたが、自宅軟禁状態で2週間以上過ごしたため、最後の方は気持ちが塞ぎ込むようになった。せめてこういったブログで、自分の思いを表白すれば気持ちが楽になったのかもしれないが、そんな余裕はないし、そこに時間を割くなら一刻でも病気を治すのが先決だろう。今は1ヶ月以上経って家族全員無事に回復したし、後遺症は出ていない。

報道される感染者の数を見ると、周りに感染者がいない時は実感が湧かなかったが、自分がその立場になると、数字の重みや後遺症で苦しむ人の気持ちがひしひしと伝わってくる。やはり経験しないとわからないことは多いものだと感じた。

アガリ時計雑感

時計好きの中で、「アガリ時計」と呼ばれる言葉がある。これは、この時計を手に入れたら他の時計は欲しくならない、つまり時計収集のループからアガル(脱出する)という意味だ。
それこそ雲上時計と呼ばれるようなものを手にしたら、それ以上の品質で普通に購入できるものは見つけにくいから、上がれる可能性は高いわけだが、時計に限らず物の収集というのはそんなに簡単ではない。どんなに良いもの、高いものを手に入れても、また別の何かを欲しくなるものだ。だから、自分はアガリ時計なるものは概念的なもので、存在しないと考えている。

ところで、ここ数年の時計の値上がりは凄まじいものがある。技術革新による値上げというのは理解できるが、自分から見ると価格に不相応な値上げというのも見受けられる。正直その金額を払うくらいなら、別のことがどれだけ出来るだろうと考えると、その時計にそれだけの価値があるのだろうかと考えてしまう。

特に複数本所有しているとメンテナンス費用が嵩むし、使用に伴う小傷が増えたりすると、高価な商品はデリケートなだけに神経質になる。だから、たくさん持っているのは本当に意味がなく、自分の気に入った時計が2〜3本あれば普通の人には十分と考える。

自分の場合は、いずれムーブメントの美しい2針の金時計をなどと考えていたが、最近はそういうイメージがだんだん湧かなくなってきた。定年で仕事を辞めたら、時計をしなくなりそうだ。老化したら筋肉が落ちて時計をするのが億劫になるだろうし、時間にあくせくすることも少なくなるだろう。

あんまり夢がなく身も蓋もない話だが、今ある時計を愛でていくのが一番良いと感じる。

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継続すること

今日は在宅勤務。昼休みに7キロ走った。運動不足解消かつストレス発散で、お金もかからない。走る前は億劫な気がするが、終わった後の充実感と夜飲むビールがたまらなく美味い。
久しぶりに2年前に書いた記事を読んでみると、たった2キロしか走っていない。ここ2年間で3倍以上走れるようになったのだ。継続は力なり。私は自分のできることを地道に続けていきたいと思う。

reversoduo.hatenablog.com

2022 明けましておめでとうございます

明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。 カルディでワインの福袋を買いました。

www.kaldi.co.jp

ドン・ペリニョンが当たったら独り占めしようと思ってましたが、ファレスコ モンティアーノというワインでした。2000円で5000円相当のものが当たったからお得ですね。妻の誕生日にふたりで飲もうと思います。