語り得ぬものを語る

日々思ったこと感じたことについて書きます。読んでいただいた方に少しでも共感できる部分がありましたら嬉しいです。

ラ・フォル・ジュルネ 2024

昨日は、東京国際フォーラムで行われているラ・フォル・ジュルネに行った。私が聴いたプログラムは212のラフマニノフの曲。

1曲めはパガニーニの主題による狂詩曲op.43で、ナタナエル・グーアンさんが演奏。端正なルックスだったが、演奏もなかなかよかった。ラフマニノフのピアノというとロマンチックな旋律と演奏が目立つ印象だが、彼の演奏は情感に流されすぎず抑制が効いていたように思えた。パガニーニといえば超絶技巧のバイオリン曲が有名だが、ピアノ曲として聴くのも味わい深い。

もう1曲はピアノ協奏曲第3番。こちらも定番の曲で、自分が若い頃よく聴いた思い入れのある曲だ。あの広大なロシアの大地と天気の悪い曇った空を思い起こさせる。ロシアという国は戦争を起こしたり要人を暗殺したりなど、後ろ暗いイメージが多いので、毛嫌いする人は多いと思うが、こと芸術に関しては文学や音楽など超一級品だ。2015年にサンクト・ペテルブルクとモスクワを旅行した際にそのように感じた。

ピアノ演奏者はマリー=アンジュ・グッチさんという若手の女子ピアニスト。16歳でパリ国立音楽院修士号を授与され、7ヶ国語を操り、パリ4大学(ソルボンヌ)で研鑽を積み、ウィーン音楽大学で指揮を学ぶという早熟の天才ぶりだ。

世の中にはすごい人がいっぱいいるものである。自分が知らなかっただけで、その世界では有名な方だとは思うけれど。

演奏自体は素晴らしかった。何度もCDで聴いている曲なので、頭の中で聴き比べをしてみたが、やはりライブの演奏というのは迫力がある。オーケストラの演奏とややズレがある部分もあったが、来日して時間も限られた中で音合わせをしているのだから、致し方ないのかもしれない。

ラ・フォル・ジュルネの良いところは、1時間程度の短い時間で自分の好きな曲を安価に楽しめることだ。本当の音楽好きにはあまり魅力を感じないのかもしれないが、私のような軽いクラシック音楽ファンにとっては、このくらいのノリのほうが気楽に楽しめる。

音楽を聴き終えた後も、余韻を楽しみながら丸の内をぶらついて帰宅した。

追伸

久しぶりに以前のブログを見たのだが、5年前に同じ場所で同じ曲を聴いていた。自分の行動の変化のなさに呆れつつも、いい曲は何度聴いても良いものだと改めて感じた。

https://reversoduo.hatenablog.com/entry/2019/05/04/203945?_gl=1*1baa9p7*_gcl_au*MjIxNTczOTE5LjE3MTMzNjAyMTc.

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人と比較することについて

日々感じていることを書いてみる。

自分のメンタルがやや不調な理由の一つには、インターネット上に溢れる情報(SNSYouTubeなどの動画など)に日々毒されていからだと感じる。ネット上には真偽不明の過剰な情報が氾濫しており、それを真に受けたりして、優越感や劣等感に浸ったりすることがある。金持ち自慢、学歴自慢、美貌自慢、社会的成功、その他色々。

こういう情報というのは、大概盛られて書かれている。誰だって、自分の良いところをアピールしたいし、悪いところは晒したくない。そうすることで、実像からかけ離れた像が出来上がるわけだ。それを見て、自分の方が勝った・負けたなどと比較する。これって、一体何の意味があるのか?

「人と比較することなんて無意味だ」という正論を言うのは簡単だが、我々は小さい頃から学校で成績を比べ、運動で速さを競ったり、会社に入れば出世競争をしてみたり、常に人との比較をしながら生きており、習慣化されてしまっているから、簡単にそれをやめることというのは難しい。

競争から降りる=負けを意味すると言う捉え方だってされることはある。でも、最近我が身を振り返っても、他人との比較って意味ないし、無駄に神経を疲れさせ、自信を失わせる気がする。周りの人に比べて自分の方が優れている、と自信を持って言える人間は数少ないし、世の中上には上がいるものである。もちろん下には下もいる。

つい先日、MLBドジャースのムーキー・ベッツ選手の言葉が自分には響いた。大谷選手との比較について求められたコメントで、「大谷選手のできることの90%は私はできない。私はムーキーであり、私のやるべきことは最高のムーキーであることだ。背を20センチ伸ばしたり、すごい速い球を投げたりすることは不可能だし、やろうとする必要もない」と言うような、ニュアンスの内容だ。

これは当たり前のようなことだが、真実を言い当てている。ムーキー選手の強烈なプライドを感じる一方で、これだけのことを言えるしやってきたからこそ超一流の選手になれたのだろうと感じる。

そこでなるべくネットの情報から離れる時間を設けて、自分を内省する時間や能力を高める時間、家族と話す時間や趣味の時間を増やすなど、もっと自分を大事にして楽しく過ごせるように考え方や行動を変えてきたいと思う。

 

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結婚15周年記念

昨日は結婚15周年記念だったので、二人でフレンチを食べに行った。

https://sites.google.com/view/ami-table

カジュアルフレンチアミーという名の通り、気軽にフレンチを楽しめるお店だったが、お客さんも年配の女性グループが多く、ちょっと騒がしかった。密やかに記念日を祝うという雰囲気ではない。

料理はシェフが自分の畑で収穫した野菜を中心に独創的なものが多かった。当然野菜の鮮度は抜群。

オマール海老や牛バラ肉の赤ワイン煮も美味だった。

15周年ともなれば、今までの思い出に浸る感じになりそうなものだが、今は二人の子育て真っ最中ということで、もっぱら子供の話題が中心で、自分たちの話はごくわずかだった。

特に家で話すことと変わらない感じだったが、お互い気兼ねなく楽しく過ごすことができた。来年で50歳と考えると人生あっという間だと感じるので、1年のうちにやりたいことを決めて最優先でこなしていこうと思う。

時計ブログの終焉と今後

ブログの更新が1年ぶりで休眠状態だった。しかし、私自身はそれなりに生活している。

ブログの頻繁な更新=日々の生活の充実ではない。むしろ、本業の仕事が充実していたり、家族と過ごす時間が増えたり、自己投資に割く時間が増えたからこその結果と言える。

ブログを更新しない代わりに、ノートに日記を書いていた。これは日々の徒然で記録を残しておくためだけのものだったので、公開する形にするのがためらわれた。

当初は腕時計に関するテーマを中心に書こうと思っていた。ただ、近年の物価上昇に伴う腕時計価格の高騰や、初老に近づいてきた自分の心境、子供の成長、親の老化など、さまざまな私的変化もあって、時計に対して今までのような情熱が持てなくなった。今でも好きではあるが、前のような「どうしても欲しい」という熱い気持ちが湧いてこない。

去年、自分で時計を組み立てたことで、時計趣味については一旦上がりなのかなと思う。世界で唯一の時計を手に入れること、それはインフレの末に雲上時計を手に入れるという一般的なルートとは異なったものなのかもしれないが、今の自分に相応しい到達点のように思えた。

これからは時計に限らず、自分の日々の考えや行動などで、書き記し伝えたいことを自由に綴っていこうと思う。

 

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組み立てた機械式時計のインプレ 儀象堂

先日組み立てた機械式時計を2週間ほど使用してみたので、その印象について記す。

●文字盤
なんと言っても文字盤の青色の発色が美しい。放射目の濃いブルーは夜空をイメージしているらしく、見る角度や光の当て方によりさまざまな表情を見せてくれる。この時計のデザインの最大の売りである。
あと、自動巻であることを示すautomaticなどの表記がないのが良い。機械式時計であることは一目瞭然だし、わざわざ文字による説明は不要だと思う。


●インデックス
ピラミッドカットの略字が特徴的だが、これは地元下諏訪の「星が塔遺跡」で取れる黒曜石をモチーフにしている。この形状によりキラキラと輝く夜空の星のように見える。
さらに5時位置には五芒星とanniversaryの表記があり、25周年記念であることを演出している。
なお、この時計はオリエント(現在セイコーエプソン)のムーブメントを使用しているのだが、オープンハートの位置が9時位置なのが普通なのに対し、この時計では8時位置に窓が開いていてテンプとアンクルの動きを確認できる。ここは時計の組み立てで最も神経を使ったところだったので、見えるのが嬉しい。


●針
不満を述べるとすれば針の形状・長さであろう。ドーフィン針の形状はグランドセイコーなどでもお馴染みの形で夜光が塗ってあり実用性は高いものの、立体感が乏しくギラついた鋭さがない。
また、ケースが39ミリのためか、インデックスと時針の隙間が大きく感じられる。要するに寸足らずな感じで、あと1,2ミリあればだいぶ印象が変わるのになと思う。
秒針はか細すぎて印象が薄い。昔の時計のように針先を曲げて欲しいとは思わないが、もう少し重量感のある針にしてくれるとよかったのになと思う。ただ、このムーブメントだとトルクが小さくて、重い針を回すのが大変なのかもしれない。


●ケース径
前述のように39ミリなので、現代的なサイズと言える。私は手首が細いのでもう少し小さい方が腕に乗せた時に安定するのだが、このデザインの時計であれば39ミリで良いと思う。

●ブレスレット
こちらはオリエントのブレスレットなのだが、シャラシャラした感じで安っぽい。価格相応といったところなのだろうが、当然ロレックスやグランドセイコーのしっとりした感じとは違う。気に入らなければ皮ベルトに交換できるわけだし、いずれ気分転換に皮ベルトを新調しても良いかもしれない。

●総評
色々不満も書いてみたが、総合的な満足度は高い。それなりの価格の時計を持っているから、手作りしたものであっても大事に使わないのではないかという懸念があったが、杞憂に終わりそうだ。むしろ思った以上の出来栄えであって、この機会に組み立てておいて本当に良かったと思う。

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機械式時計を組み立てる @下諏訪 儀象堂

久しぶりのブログ更新。

昨日機械式時計の組み立てに参加した。 場所は長野県の下諏訪にある儀象堂という時計工房。

参加したのは25歳の男性と私の二人。その方は鹿児島県の屋久島からの参加ということで驚いたが、並々ならぬ意気込みを感じた。担当技師はセイコーエプソンOBの平林さんという超ベテランの講師だ。

白衣を着て、講師の説明を聞く。初めにオリエンテーションがあって、全体の組み立て工程の話があり、作業を開始する。 地板にきち車、二番車、巻真を取り付けたあたりまでは割とスムーズに進んだ。


ひょっとしたら楽勝?と思いきや、ここからが大変だった。。

次は、かんぬきや香箱車など、動力伝達機構の部品を組み立てる段階。この辺りになると、老眼の進んだ私には、ごく小さな穴に部品を通すのが結構難しくなり、ハズキルーペのようなものを使用してチャレンジし、なんとかクリアする。

さらに脱進機や調速機構の取り付けに移る。アンクルの取り付けに苦戦した後、時計の心臓部とも言えるテンプの取り付けをする。
これがまた繊細な部品で、ピンセットで裏返しながら機械にそっと差し込むと、付いた途端にテンプが動き始め、感動を覚えた。


午前中に機械部分の取り付けはほぼ終わり、午後は外装に取り掛かる。
中でも自分が一番苦労したのは、筒車を取り付けた後の針の取り付け(特に秒針)。
私が作っているのは限定品の時計なので、文字盤に傷がつくと交換できないから絶対に傷をつけないようにしてくれ、と言われて緊張する。
そう言われても、普段ピンセットを使って細かい作業をすることなどないし、力の加減が難しく何度も手をプルプルさせて、針をポロリと落としてしまい悪戦苦闘。 私にとってはここが一番大変だった。

それでも講師の方に助けてもらいながら、なんとか取り付けることが出来た。
ひっくり返して回転錐をつけてケースに嵌め込む。
途中で精度のチェックなども行いながら、5時間近くでようやく完成した。

時計を腕にはめて8時の小窓から見えるテンプの動きを眺めていると、愛着とやり遂げたささやかな自信が湧いてきた。
また、機械式時計の仕組みについても、今まで以上に興味が湧いてきた。本で読んである程度構造は知っていたものの、実際に組み立てるとなると話は別だ。これは経験しないと絶対にわからない。

そういう意味で貴重な経験が出来たなと思う。
場所が遠いし車がないと前泊が必要なので、お金もそれなりにかかるけれど。時計の好きな方には楽しめる作業と思うので、もしご興味のある方は参加されると良いと思う。

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【Book】豊饒の海(三島由紀夫)

三島由紀夫豊饒の海を読了した。全4巻の大作で、三島由紀夫の最大かつ最後の作品。難しい部分も多いが、三島の華麗な文体と豊かな語彙に加え、生と死、美と醜の絶妙なコントラストが味わえる作品。特に最後の大どんでん返しの驚きは、最後まで読むことでしか味わえない感覚だ。

読みやすさ☆☆★★★
おもしろさ☆☆☆☆★

●あらすじ
輪廻転生をテーマにした作品で、各巻で登場人物が生まれ変わる。生まれ変わる人には、脇腹に3つのホクロがあり、それが目印になっているという変わった特徴がある。

「春の雪」は華族に生まれた松枝清顕と綾倉聡子の報われぬ恋愛を描いた物語。綾子が子供を堕し出家するという悲劇的な終わり方をする。

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感想(1件)


奔馬」は飯沼勲という血気盛んな若者が叛乱を起こす話。思想的に偏った決起集団で、読んでいて感情移入がしにくかった。結局、最後は切腹自殺をするところが、三島作品らしい。

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感想(15件)


暁の寺」では、タイの姫君であるジン・ジャンが生まれ変わりの人物。輪廻転生の実相に一番迫っているのはこの巻なのだが、阿頼耶識など普通に馴染みのない言葉が多く思想的に難解。

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感想(13件)


最終巻の「天人五衰」は打って変わって読みやすいのだが、この巻だけ異質だ。安永透という人物が生まれ変わりと思いきや、実は偽者であるとわかり、最終的に1巻目の「春の雪」に出ていた綾倉聡子が尼僧として現れ、衝撃の結末を迎える。

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感想(15件)


●最後に
実際、これだけの大作なので、読むのは一苦労なのだが、読了後の感動は凄まじいものがある。三島自身が、これ以上の小説を書くことは出来ない、と言い残して、市ヶ谷駐屯地での割腹自殺を遂げたわけだから、事実上の遺書といってもよい。

三島は本当に謎多き作家だが、最後のどんでん返しで、彼の抱えていた死生観・無常感のようなものを推察できるし、作品名の「豊饒の海」というのは痛烈な皮肉で、実は「月の海」のように枯れ果てた窪みを意図しているというのが理解できる。